ふるさと

掲載日:2016.04.08

「わたしは、誰だ?」 
自称64歳の父に、問うてみた。 
「久恵よ。」「久恵しか、おらん(いない)。」と、母の名を言う。 
「娘でしょう。美恵だよ。」と言うと「おみえさんか..。歳とったねェ。」と言った。 
まったく!! 
認知症が進んでいるとは言え、まだ表情が豊かな父との一問一答の会話が出来たことにひと安心した。 
父とは対照的に、あんなに活発に会話が出来ていた母は、わずか2月の間に無表情になり会話も無く人が変わったように老いていた。 
病状や認知症には、色んな形が有ると聞いているけど父とは違う母の症状に寂しさを感じる気持ちを隠せない私。 
何も感じてないのだと思っていたけど、帰り際に「又、直ぐに来てね。」と、まっすぐに見つめて言う。 
2月前は、まだ元気だからお金を使って来なくてもいいと言っていたのに。 

高知は桜や梨の花が満開。 
私の実家のある針木は昔から梨の産地で、この時期は梨の受粉作業の真っ最中だった。 
軽トラいっぱいに今花盛りの梨の枝を運んでいたのでどうするのだろうと聞いてみたら、花粉を採るのだと言う。 
白い花びらをひとつ、ひとつ摘み取って、脱穀機(?)のようなもので赤い花粉のみ採取していた。 
その赤い花粉から黄色の花粉を取り出して、梨の花びらに筆で受粉していくのだという。 
手間暇かけた作業にビックリした。 

「雨も必要ながよ。百姓は雨が降らないと身体を休める時が無いがやき。」 
散歩していたら梨畑から聞こえてきた作業している人の声。 
雨が多くて受粉作業が進まなく困っていたはずなのに、ポジティブな姿勢だなぁとつい笑みを浮かべながら通り過ぎる。 
(写真の上は、梨の花。下は満開の桜) 

子供の頃、山桜やつつじ、つばきなどのお花が咲くころ、よく遊山をして楽しんだ。 
あちこちでお花見もしていたけど、のどかな風景を眺めながら友人と遊山ができた。 
日焼けも良いかなと思うくらいの暑い日差しの日だったけど、私を癒してくれる故郷の風景。 
やさしく包んでくれる家族や友や故郷。帰ってきて良かったと思った。 

みんなお世話になりました。元気になれた気がします。